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○柴田勝家水缸を破りて城を守りし事

卷之三 第9話 · 段落 1 · NDL 1078984 67コマ R

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永祿十二年佐々木承禎、柴田勝家が守る所の長光寺の城を圍みて攻め、遂に惣構を打破る。勝家本丸に有りて爰を專途と防ぎ戰ふ。鄕民佐々木が陣に往きて、此城は水の手遠く、遙なる所より水を取り候。夫を取切る程ならば城は保つ可からず、と告げ知らせければ、承禎悅びて水の手を取り切りたり。城中是に困め共弱れる色を現はさず。承禎之を見ん爲に和平せんとて、平井甚介を使にして城中に入れたり。平井勝家に對面し手水を請ふ。缸に水滿ちたるを小姓兩人して舁き出でたるに、平井手を洗ひければ、小姓殘れる水を庭に捨てたり。平井歸りて斯くと云へば、事の違ひたる故に怪み合へり。斯くて城中旣に水竭きければ、勝家、明日は討つて出で切死せん、とて諸士を集め最期の酒宴す。殘れる水を問へば、二斛許入るべき缸を舁き出す。然らば此間に渴をやめよ、とて人々汲飮てければ、勝家眉尖刀の石突にて缸を碎きたり。夜明方に門を開き打て出る。佐々木思ひも寄らざれば、大に敗北しければ、勝家首八百餘級を得て岐阜に獻ず。勝家は猶長光寺に在り。信長感狀を與へ賞せらるゝ事大方ならず。是より勝家を缸破り柴田と世に稱しけり。