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○東照宮御父子御陣替の事

卷之二十 第19話 · 段落 1 · NDL 1078984 325コマ L

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大坂冬の軍に、東照宮は茶臼山、台德院殿は岡山に陣所を移し替へらるゝ事有り。諸將も城近く陣を寄する時、若し騷ぐならば城より擊つて出づる事有らん。陣を整へ靜り候へ、と五の字の御使番乘廻りて仰せを傳へし處に、井伊直孝陣所を替ふると、鐵炮を押並べ城中に打懸け、閧の聲を擧げ、只今城に攻入らん體なりしかば、台德院殿、直孝兄が陣代となり人そばへしけるよ、と怒らせ給ひ、本多正信を東照宮の陣に使を命ぜられけり。御前に參り未詞に出さざる處に、直孝は父の子なり。今日陣所を換ふる時、味方を競はせんとて鐵炮を打たせしよ、と仰せられければ、正信承り、斯くまで思召の同じきと申すも怪しき程に候。直孝が振舞感じ思召し、參りて其由を申せと仰せ候ひき、と申して出でにけり。