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在原業平、小野に惟喬親王を訪ねる編集見出し

3 · 398字 ·編集段落

爰に宰相中將在原之業平、昔の契り不㆑被㆑淺人成ければ、ふん〱たる雪をふみわけ、歎々御跡を尋奉り而見まいらせければ、まふとううつりきたつてかうやう嵐にたへ、とういんけんかきうとうしん〱たるおり、人目も草もかれぬれば、山里いとゞさびしきに、皆白庭のをも、跡ふみ付る人もなし。折節御子は端ちかく出させ給ひて、南殿の御かうし三間あけさせて、四方の山を覽めぐらし、げにや春は靑く夏はしげり、秋はそめ冬は落と云昭明太子の思召つらね、香爐峯の雪をば簾をかゝげて見なんと、御口ずさみ渡らせ給ひけり。中將此御有樣を見奉るに、只夢の心地ぞせられける。近參而昔今の事供申承るに付而も、御衣の祛1しぼりもあえさせ給はず、後鳥羽之院之御遊行形野の雪の御鷹狩迄、思召出れて中將かくぞ申されける。別れては夢かとぞ思ふ思ひきや雪ふみわけて君を見んとは御子も取あへさせ給はで御返歌に、夢かとも何か思はん世の中をそむかざりけん事のくやしき
  1. 誤植 — 底本「祛」(示偏)。袖の意の「袪」の誤植か。