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清康の家督相続と譜代への酒盃編集見出し

11 · 901字 ·編集段落

然間信忠之仰には、何としても一門を初又は小侍どもに屆迄も、我に思ひ付ぬと覩たり。其を何と云に一門之者も遠立而出仕も無、小侍どもさゑ出仕をせず。賸普代の者迄我を嫌うと覩ければ、さらば隱居して次郞三郞に讓と仰有而、次男九郞豆殿に械の鄕を讓せ給ふ。三男十郞三郞殿に見次之鄕を讓せ給ふ。次男三郞淸康得御代を渡させ給ひ而、信忠者大濱之鄕へ御隱居成。次郞三郞淸康御法名道法、十三之御年御世に渡らせ給ひし寄此方、諸國迄人之賸申事唯事不㆑被㆑成。去程に此君者御脊矮くして、御眼之內くならてうのごとし。只打をろしのこたか寄も猶も見事にして、御圖幷人無。殊に弓矢之道に上越人も無、御やさしくして、大小人を隔て給はで、御慈悲をあそばし御情を懸させられ給ふ。去程に御內之衆も一心に思ひ付、此君には妻子を歸り見ず一命を捨而屍を土上にさらし、山野の獸物に引ちらさるゝとても何かは惜しからんや。此御跡六代の君、何れも御武邊並に御慈悲同御情をもつて、次第々々につのらせ給ふと云ども御六代に勝させ給得ば、天下を納させ給はん御事目の前成。去程に御膳の上時分、各々出仕をする處に、御しるしの御でうぎを打あけさせ給ひ而、指出させ給ひ、面々是に而酒を被下よと仰ける。各々頭を地に付而謹ん而伺候申す。何とて被下ぬぞ、とく〱との御意なれども、別の御酒盃供思はず御主の御めしのでうぎなれば、誰かは可被下哉と思ひ而、猶もひれふすを御覽じて、面々何とて被下ぬぞ、過去之生性能ば主と成、過去之生性惡しければ內之者と成、侍に上下者無物成、謙に早く被下よと御意之下故、餘り御辭退申歸而惡かりなんと存知、畏つて召出しに罷出る。其時包笑給ひ而、老若ともに不㆑ら㆑殘罷出、三つづつ被下よと御意なれば、餘り目出度忝さに、下戶も上戶も押なべて三ばいづつほして罷立、道にて物語をする樣は、只今之御ぢやうぎの御酒盃並に御情之御詞を、何程の金銀米錢を知行に相そゑ、寶物を山程被下たると申すとも、此御情には替難。只今之御酒盃之御酒者何と思召候哉。御方々又は我等供之頭の血成。此御情には妻子を歸覩ず、御馬の先に而討死をして、御恩之報ぜん事今生之面目、冥土の思出可㆑成と申、各一同に尤成と悅。