大久保七郞右衞門は、賀ゞ河迄引のきけるが、鳥井彥右衞門者共が、くづれて來るを見て、其方へむかひ而、一騎歸しける間、其付而大久保平助馬寄飛んでおりて、やりをひつさげ而歸しける。七郞右衞門は、金のあげ羽之蝶の羽のさし物にて、かけまわりければ、さし物を見て、頓て旗をも押寄ける。にげちる者もかけよせ而、河原にこたへける。平助は銀之あげ羽之蝶の羽之九尺有さし物をさして、むかひける處へ、くろき具足をきて、やりをもちて押込みて來る者を、つきふせ而、頸をばとらずして、よせくる敵をまちかけいたる處へ、さし物を見かけて、松平十郞左衞門來る。次に足立善一郞來る。次に木之下隼人が來る。其寄大田源藏、松井彌四郞、天野小八郞、戶塚久助、後藤惣平、けた甚六郞、ゑざか茂助、天がた喜三郞、是等が、平助いたる處へ來りたれば、是等を引つれて、上のだいへ押上けるに、敵も防ぎけるが、ことともせずして、押上ける處に、めてはさなだが旗本、弓手と向ふは五間六間之內に、こと〲く敵がひかへていたる處に、眞田が內之へき五右衞門が弓手之方寄、此者共がならびいたる中を、敵としらで通處を、平助が見て、それは三つまきをせざるは敵にて有ぞ、それつきおとせと云ければ、八幡へき五右衞門にて有ぞ。敵にはあらざると申ければ、平助云、へき五右衞門と云に、つきおとせと言時、足立善一郞が、はしりかゝりてつきけるが、鞍の後輪へあたる。五右衞門が共に來る者が、やりを取なほして、善一郞を少つく。然處に大久保平助前へ來るを、胴中と思ひ而つきければ、五右衞門に付たる者共が、やりを四五本もちけるが、二三本にて平助がやりを、からみてなげければ、なほして、つかんとする間に打とおる。けた甚六郞が前へゆきける時、又平助云、甚六郞それつけといゝければ、はしりかゝりてつきけるが、是も追ひさまなれ共、肘のはづれ之腰わきにあたらん。