e031.p01校訂済43L:2–6別鹿島傳右衞門といふは伊豆の人なり。若き比武名有りけるが、後に髮を薙ぎて久閑と稱し、伊東に引籠りて居たりけるを、信玄聞きて、三千貫の地を與へて招けり。久閑、我年老いたり。何の爲に奉公すべき、とて出でざりけるを、尋ね問べき事あり、とて强て呼出し、春より秋まで夜々軍物語せさせて聞かれ、自筆執りて是れを書記されけり。信玄四方に大國の敵ありて威名を振はれしも、斯く心を用ひられし故にや。