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○信長公朝倉を擊ち給ひし事

卷之三 第28話 · 段落 1 · NDL 1078984 74コマ R

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信長越前に攻め入りし時、朝倉義景二萬許の兵にて刀根山と言ふ大山に陣取り、麓に信長の先陣控へ居たり。或日信長井樓に上り敵を見渡し、敵は今夜必ず引き退くべし。先陣の者共勿怠そ、と使を度々遣りて下知せらる。是れを聞きて、殿は如何で斯くは仰せ候やらん。敵大軍にて山に據り地の利を得て且主戰なれば、何條引き退くべき、と怪みけり。夜に入りても信長は猶井樓に在りて、敵陣を睨んで目も離さずして有りしが、丑の刻許に、すはや敵は引くぞ、と言ふ程こそあれ、螺吹き立てさせ馬に乘り、先陣の大ぬる山の奴儕が油斷したるに、旗本の者共功名せよ、とて眞一文字に進まれしが、果して先陣は後れて信長の旗本にて勝利を得られけり。信長常に怠る者を大ぬる山とて笑はれしとぞ。