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○謙信單騎佐野城に入られし事

卷之四 第8話 · 段落 1 · NDL 1078984 82コマ L

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天正二年北條氏政、三萬の兵をもて佐野政綱を圍まるゝと聞きて、謙信八千許の兵を率ゐ後詰せられけり。城危しと聞えければ、謙信、後卷は我に劣らぬ士大將數多有れば心易し。佐野の城こそ覺束なけれ。先我は城に駈け入りて力を添へなん、とて物具も著けず、黑き木綿の胴服を打冠ぶり、十文字の鎗を橫たへ、僅に十三騎引き具し、氏政の陣の前を馬を靜に步ませ、佐野の城に入りたるを、氏政の軍兵見て、夜叉羅刹とは是なる可し、とて恐れて近づく者も無し。氏政圍を解いて引退くを、謙信軈て門を開かせ給へ共、氏政一軍もせで引き退きけり。