豐後國合志常陸介を大友義鎭攻むる時、佐伯紀伊守一說に彈正少弼惟敎大將たり。佐伯が士大將高畑三河、一日に十三度の功名あり。其後人問ひて、僅に鎗刀一兩度迫り合ひても大に疲れ、息切れて小兒にも負く可きに、一日十三度の功名は、假令志は飽まで剛なりとも、力も息も續きぬるこそ訝しけれ、と言ふ。高畑聞きて打笑ひ、別の子細も無き事なり。我戰場に打臨みて勿論の事とは言ひながら、死生存亡の間に於て少しの思案を費す可き事無し。然る故に人は騷しくても我は靜なり。大方は鎗を合せ、太刀を打違へざる已前に力を出し氣を張るならん。是に依て精神草臥疲れたるならん。我敵に逢ふ時、我首を敵に取らするか、敵の首を我取るか、此二つの中天命に有りと思ひて、初は緩きに似たれ共、打合ふ時一決して一鎗の中に勝負分るゝ故に、疲るゝ事無く候なり。不㆑入處にて氣を苦しめざる故、幾度事に逢ひても胸中安閑なり、と答へけるとぞ。