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○峯澤某謙信を擊たんとせし事

卷之十一 第2話 · 段落 1 · NDL 1078984 191コマ L

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謙信の許に峯澤何某といふ士、罪有りて放斥せられしに、越中の椎名に奉公し、謙信越中へ師を出されし時、彼士叢に隱れ、鐵炮を持ちて伺ひ居たりしが、俄に鐵炮を傍に投捨てて泣居たり。謙信見出して、如何に峯澤珍し、と言はれしに、さばかりの仁君智將を討ち奉らんと存ぜし事悔しく成りて候。今遙に見奉りて、先に屋形の心に背き、又斯る設を工み申す事此上も無き大罪にて候。疾う〱首を刎ねらるべし、と言ひて平伏しければ、謙信打笑ひ、吾に智仁とは相應せざる虚名なり。疾馳歸りて椎名に能く仕へよ、と言はれしかども、彼の士越後に歸りて、農夫と成りて一生を終りたりとかや。