東照宮何れの時の軍にや、
久世三四郞宣廣、
坂部三十郞廣勝二人を物見に出し給ふ。
坂部は勇める色あり。
久世は氣色甚だ惡う見えしかば、側より笑ふ人の有りしに、
東照宮、
坂部は天性の剛の者なり。
久世が及ぶべきに非ず。然れども
久世は人に劣りて生甲斐無しと思ひ定めたる者なり。其故に務めて勵む故、心を勞して其氣色顯れて見ゆ。今見よ、
久世は
坂部よりも敵近く進み行きて見て歸らん物を、と仰せける處に、二人歸り參りたるが、果して御詞の如くなりけり。
東照宮、
坂部は生得の勇を賴にして懈あり。
久世は勵むをもて味深し、と感ぜさせ給ひけり。