e402.p01校訂済297R:7–11別永井信濃守尙政に執政の職を仰出されし時、井伊直孝に對面し、不肖の身斯る任を受け、甚恐懼に及び候。敎訓を得て其職に居候はばや、と申されければ、直孝、尤の事に候。我敎へ申すべし。身を潔くし明朝來られ候へ、と有りければ、辱き由言ひて沐浴し、禮服して其明の朝行かれしかば、直孝出會ひて、世の諺に油斷大敵と申候事定めて知られたるべし。萬事の危きに及ぶ事、皆是油斷より破るゝ事の候。此事固く忘られな、といはれけり。