常山紀談本文データベース

目次 › 拾遺 卷之三 › e581

○大坂冬陣上泉義鄕指物の事

拾遺 卷之三 第21話 · 段落 1 · NDL 1078984 415コマ L

人物地名家(氏)官職日付索引へ

大坂冬陣の時、井伊家の諸士眞田出丸の塀下に附きたる時、堀際の柵を潛りて堀際へ附きたるに、柵を潛る時、指物邪魔になりたる故、之を拔き鎗に持添へて柵を通りしに、上泉義鄕は指物をがつたりまで紫革にて結び附けたるに、解けかねて餘程躊躇ひたる時、日頃心易出入して目をかけたる足輕の小頭、何某義鄕の後に續いて柵に臨みたるに、義鄕の指物留の括解けかねたるを見て、義鄕の傍により、治部左衞門樣、此場へ差續きたるぞ、と云ひて件の指物留の緒を解きてたれたる故、指物を拔きて鎗に持添へ、柵を潛りて塀下へ著きたるとなり。これ義鄕指物留をせられたる證據なり。其餘の諸士は指物留をせざるにや、早速に拔きて柵を潛りたるとなり。右の足輕小頭、右の場所へ出て、義鄕の指物留の解けざるを解きたるは、其場へ著きたる證據として、大坂の役終り治平になりたる時、賀州へ三百石にて身上濟みたるとなり。