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○淸正の士腰兵粮を持たずして不興の事

拾遺 卷之四 第10話 · 段落 1 · NDL 1078984 428コマ R

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加藤淸正の士或時の城乘に、金の熨斗附の大小をさして塀をこゆるに、後より尻を押し上るものあり。我を押上るよ、と思ひ乘上り、後に見れば熨斗附のさやを切廻して金を取られたり。人みな、油斷なりと沙汰す。淸正が曰く、城乘を心として後を顧みざるは勇士なり。但金の熨斗附を指したるは、若輩の故なり。戰場へさやうの美麗なるものをば用ひざる事を不㆑知と覺ゆ。末たのもしき若者なり、と言はれたり。又或陣に野陣にて、晝辨當を遣ふに、或兒小姓腰兵粮を不㆑帶、その伯父燒飯を分ち與ふ。淸正これを見て、少年の花車風流も時によれり。陣中にて兵粮を持たざるは武備に怠りたり。過怠に馬を取上ぐべし、とて乘馬を取上ぐ。伯父、若年のものに心を附けて敎ゆべきに、武備不㆑令㆑勵科甥に同じ、とて是も馬を取上げられたり。