山崎の軍に
堀尾帶刀吉晴の士
則武三大夫首を取りて
吉晴の前に來る。
吉晴、思ひしよりも出かしたり、と詞を掛けられしかば、
則武怒つて首を提げて進み寄り、斯る時は大將も目の暗くなる物に候。
則武三大夫が取つたる首よく御覽候へ、と罵る。
吉晴も、憎き奴哉、と言ふ儘に、刀を抽て斬られしに冑の星を削りたり。
則武眞一文字に敵の中に駈け入りて首を取りて歸る。
吉晴は、必ず
則武は討死せん、と悔み思はれし處に、
則武來りければ大に悅んで、汝を先に褒めたる詞、賞する餘りに思ひしよりもと言へるは、剛の者に言ふべき詞に非ず。我過にてこそあれ。汝が二度の先駈大きに勝れしよ、と感ぜられけり。