明智本姓
土岐氏なれば、時と
土岐と韻を通はして、天下を取るの意を含めり。
秀吉旣に
光秀を討ちて後、連歌を聞き大に怒りて
紹巴を呼び、天が下知るといふ時は天下を奪ふの心現はれたり。汝知らざるや、と責めらるゝ。
紹巴、其發句は天が下なるにて候、と申す。然らば懷紙を見せよ、とて、
愛宕山より取り來て見るに、天が下しると出たり。
紹巴淚を流して、是を見給へ。懷紙を削りて天が下しると書換へたる迹分明なり、と申す。殊勝にも書き換ぬ、とて
秀吉罪を許されけり。
江村鶴松筆把りにて天が下しると書きたれども、
光秀討たれて後
紹巴密に
西坊に心を合せ、削りて又始の如く天が下しると書きたりけり。