朝鮮蔚山の役、寄手
鎬貴夜密に伏勢を設けて曉に及び、陣營を焚きて退き走る事數里にして、城兵を誘ひ以て大に之を擊たんと爲しけるに、城兵之を追はんとするを
加藤淸正許さずして曰く、彼火を擧げて退く、疑ふ可きの一なり。又退くに殿を設けざる、疑ふ可きの二なり。又夜を以て退かずして曉を以てする、疑ふ可きの三なり。是れ將に我を誘うて、之を殲にするの巧なるや鏡に懸けて觀るが如し、と暫く見物し居し程に、
明の伏勢は巧みし事空しく成りしかば、欠伸しつゝ現れ出でて、終に復城を圍みければ、皆々
淸正の明智を感ぜられける。