常山紀談本文データベース

目次 › 卷之十 › e258

○淸正の士卒土穴に住みし事

卷之十 第23話 · 段落 3 · NDL 1078984 188コマ L

人物地名家(氏)官職日付索引へ

慶長二年二月、淸正再び朝鮮に渡られしに、船の著きたる處は北地にして寒風烈し。土民ども土穴を穿ちて其中に住居りしに、日本の軍兵押渡ると聞き逃走りしかば、淸正の兵共土穴に入りて臥す。淸正漫に民を殺さず、非道を嚴に戒めしかば、後には商人も物を馬に附けて來り賣りしに、寒氣以ての外に甚しくて、馬の毛に氷柱の下りてからめきて鳴る聲、土穴の中に聞えけるとかや。王元美が詩に、
風劈きて㆑面を疑ひ㆑裂くるかと凍り粘して㆑髭に有り㆑聲
と言へるを懷ひ合されぬ。軍兵晝は終日風砂の中に立ち、夜は土穴に臥しける故、皆雀目に成りしを、土民敎へて鳶を食して癒えけるとぞ。