e283.p01校訂済199L:2–6別越前の秀康卿伏見にて、國といふ妓女を召して舞はせられし時、襟に掛けたる水晶の珠數見苦しき、とて物具の上に掛け給ふ珊瑚の珠數を賜はりけるが、暫舞ひける時、頻に淚を流し給ふ。人々怪みければ、秀康卿、今天下に幾千萬の女有れども、天下一の女と世に譽められ、名高きは此女なり。吾天下第一の男と世に言はれず。彼の女にさへ劣り果てたるかと思へば泣かれける、と仰せ有りけり。