安藤帶刀の子を
飛驒守直治といふ。
成瀨隼人正正成、或時
直治に
紀州にて鍛ひたる刀を乞ひ得しが、後に
成瀨彼刀の事を語りて、
尾張にて死罪人の有りしを試みたるが、快く切れざりき。能出來たるに殘多し。又鍛ひ直させて給はり候へ、といふ。
安藤、安き事なり。
紀州にて心よく切れたりき。怪しき事よ、と言ひしに、
成瀨打笑ひ、
紀州にて心よう切れつるに、
尾州にて然らざるは、
尾張の人骨堅き故ぞ、と戲れしに、
安藤聞きも敢ず、いや〱
尾張の士の腕の弱き故なり。鉛刀にても
紀州にては能く切れ候、と答へたり。