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○榊原の家人黑田彥左衞門の事

拾遺 卷之二 第14話 · 段落 1 · NDL 1078984 403コマ R

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榊原の家人黑田彥左衞門と云ふ兵あり。大坂落城の時、五月七日赤母衣懸けたる敵を突伏せ乘懸り、首を取らんと仕り候を、傍輩の三枝勘兵衞乘附て、彥左衞門其首は相討ぞ、と云ふ。彥左衞門は夫を聞きて首をも不㆑取打捨てて、其身は鎗提け1先へ行く。三枝之を見て又言葉を懸け、彥左衞門相討ぞ〱、と呼はれども、彌聞かぬふりに先へ通り、又敵を突倒能首取り、初め捨てたるをば三枝打取り、偖遠州は病死故館林へ久世三四郞、坂部三十郞を遣され、今度手柄高名の御吟味あり。三枝勘兵衞申候は、我等取り候首は、黑田彥左衞門鎗附けたる首にて候。相討ぞと呼懸け候へども、其儘捨てて通り候故、ひたと相討ぞと呼び候へども聞附ず。先へ參り候故、後にて此首を取り候、といふ。三四郞、三十郞彼の黑田を呼び、是を聞けば、中々不㆑覺、と答ふ。三枝は黑田に向うて、其方敵を鎗附け候を見て、相討と言葉を懸くるに、其方は其突伏せたる敵を捨て、先へ通るに附、跡より相討ぞと四五度呼懸け候へども、見返りもせず參り候に附、是非なく彼敵の首を取り候、といふ。彥左衞門は猶、覺え候はず、と坐を立去りぬ。此時兩御所樣上聞に達し、御感淺からざりき。
  1. 誤植 — 底本「提け」。濁点が欠けたか(「提げ」)。