e209.p01校訂済166L:11–13167R:1–1別秀吉陸奧に赴き、蒲生氏鄕に八十萬石の地を賜はりけり。氏鄕退出し柱に倚掛りて淚ぐみけるを、山崎の某居寄りて、辱く思はれん事尤なり、と言ひしに、氏鄕私語て、吾都近き所にて小き國一つ賜はらば終に天下に旗を揚げなんに、邊鄙に棄てられたれば何事か仕出すべき。志の空しく成りたるに依りて覺えず淚の流るゝよ、とぞ語られける。