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○蒲生家の士大將軍兵調練の事

卷之九 第17話 · 段落 1 · NDL 1078984 167コマ R

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蒲生氏鄕笠井大崎にての軍に、佐久間備前、同內膳兄弟を先陣とせらるゝに、下知せる事氏鄕の心に叶はず。此兄弟は元秀吉に屬せしが、秀吉より氏鄕に賜りたる侍大將なり。氏鄕、明日の軍は神田修理、外池信濃、岡野左內、蒲生源右衞門等先陣せよ。佐久間兄弟は見物せよ、とぞ下知せられける。先陣の士大將六人相集り、佐久間兄弟の軍立惡きとて斯く仰承りぬ。各討死したりとも、己が躬を捨てて只汚名を出さざるまでの事にて、斯仰を承りたる甲斐も無くては御大將の恥辱なり。然らば進退の節內馴しせずば叶ふまじ、とて先陣の軍兵を打具し、平野に押出し駈引の馴し、五度に及びけれども尙調はず。六人そこにて、明日の軍は殊に大事なる故、斯樣に馴しに及びぬるよ。人々の進退以の外調はず、如何にも能く心得候へ、と再三詳に申し聞せ、さて采配を取り下知するに、進退節に當りしかば、去ば明日の軍は思ふ儘なるべし、と悅び勇みて、果して敵を切靡け大勝を得たり。淺野長政秀吉の命にて陸奧國に有りしかば、其軍の有樣駈引の圖に當りたる、終に見聞に及ばざる所なり、と褒められたりとなり。氏鄕も大方ならず悅びて、六人に感狀を與へて、種々の物添へて賞美有りけり。