常山紀談本文データベース

目次 › 卷之九 › e222

○豐臣關白五腰の刀の主を察せられし事

卷之九 第28話 · 段落 1 · NDL 1078984 171コマ R

人物地名家(氏)官職日付索引へ

秀吉伏見にて或日廣間に出でられしに、五腰の刀を見て、試に其名を言はん、とて指されしに、違はざりければ、前田玄以、誠に神智の御座し候よ、と驚きたりければ、秀吉笑ひて、何の子細も無きぞとよ。秀家は美麗を好むが故に黃金を鏤めたる刀是なるべし。景勝は父の時より長劍を好めり。寸の延たる刀を是に當てたりき。利家は又左衞門と云ひし時より先陣後殿の武功により、今大國を領すれども昔を忘れず。革卷たる柄の刀是他の主に非ずと思へり。輝元は異風を好む、異る體に飾なせる刀是ならん。江戶大納言は大勇にして一劍を賴むの心なし。取繕ひたる事も無く又美麗もなき刀其志に叶ひたり。此を以て察しけるに違はざりけり、と言はれけり。江戶大納言とは東照宮の御事なり。