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○木村常陸介最後の事

卷之十一 第12話 · 段落 1 · NDL 1078984 195コマ L

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關白秀次高野の靑巖寺にて自害ありけれは、事を司り寵愛せられし人々、所々に誅せられ自害しける中に、木村常陸介師春撿使の松田勝右衞門に向ひ、今度關白聚樂を出て伏見に赴かせ給はんと定められし時、師春申しぬるには、太閤御對面だに御座しまさんには、讒者の程明め給はん。然れども、夫までも無く中途より遠國へ放流せられ給ふか、甲斐無く御身を白刄に伏し給はん。必ず此二つの間なるべし。天晴太閤の使者を斬つて捨て、諸將の妻子聚樂に有るを人質に取り、罪無き事を申し開かせ給ふべし。さもあらんには和睦も堅く定り、又戰にも勇名を遺すべし。空しく聚樂を出でさせ給ふ樣や有るべき、と再三諫め申しけれども、吾太閤に敵する心無しとて承引候はざりき。然れば關白に於て異心座しまさざる事明なり。此旨を達して給はりなば、其恩黃泉の下にも忘るべからず、と云ひ置きけるを、松田折を得て秀吉に申しければ、太閤木村が志を愍みて、妻子に米百石を與へて、京都誓願寺の近所に住居せしとぞ。