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○大納言賴宣卿援兵の總大將を願ひ給ひし事

卷之二十 第5話 · 段落 1 · NDL 1078984 316コマ L

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正保元年は明の崇禎十七年なり。明朝亂れ、陝西の李自成などいふ者盜賊の長となり、一揆を起し北京へ攻入り、明の天子も自ら縊れて崩じ給ひけるに、福建の鄭芝龍書簡を獻げて加勢を乞ひけるに依りて、紀伊大納言賴宣卿、異國より加勢を賴み申す事、日本の武威四海に輝くとも申すべし。諸浪人を集め候ひなんには數十萬も有るべし。夫に西國、中國の大名小名差し加へられ然る可からん。拙者に總大將仰せ附けられ候はば、何事の悅びか是に過ぎん。異國に攻入り、思ふ儘に日本の武勇を見せ候べし、と願ひ奉り給ひけれ共、御加勢の事止みければ、兼て仕へ申せし武功の物師共、淸兵と一軍して老後の思ひ出にせんと勇みける人々、殘り多き事よ、と言ひ合ひけるとかや。