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○伊藤武藏守馬驗を拾ふ事

卷之二十二 第7話 · 段落 1 · NDL 1078984 343コマ L

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同じ日秀賴は樓門に打出でて、灑金を緋威にしたる物具著て、太閤の時より傳へられし金の切さき二十本、茜染の吹貫十本、玳瑁の千本鎗を並べたて、太平樂と名附けたる七寸有りし黑の馬引立てられし所に、先陣皆敗北しけると聞えければ、今は是迄なり。敵の中に駈入り討死せん、と進まれしを、速水時之、今打つて出でたりとも勝利候まじ。疾く本丸に入らせ給へ、とて引返す。斯りければ士卒散々に成りて馬標を棄てたりしに、伊藤武藏守後れて歸り入りしに、是を見て、朝鮮迄聞えし豐臣家の馬標を敵拾ひなば、大坂城中に男子は一人も無きと日本國中の物笑とならん、と言ふ儘に、手づから振りかたげて、城中千疊敷に歸り入りけり。