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○巖石城合戰坂小坂先登の事

卷之八 第13話 · 段落 2 · NDL 1078984 156コマ L

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秀吉島津を伐たるゝ時、蒲生氏鄕、前田利長巖石の城を攻めらるゝに、氏鄕の先陣蒲生源左衞門此頃は坂小坂と言ひけるが、眞先に進んで、假名にていちばんと墨黑に書きたる白き吹貫を門の眞中に押立て、喚き叫んで相戰ふ。雨の降る如く鐵炮を打出せば、吹貫は芭蕉の秋風に破れたるが如し。大音上げて、一足も引くな者共、と下知し、面も振らず攻入りけるを、後陣より、是ぞ聞ゆる蒲生が內の士大將小坂と言へる大剛の者よ、と口々にぞ譽めたりける。寺島美濃守此頃は半左衞門と言ひけるが、是は黑き吹貫押し立て坂に續きたり。利長の士松原久兵衞を始として先を爭ひ攻入り、終に城を攻落して首四百餘打取りたり。秀吉氏鄕に感狀を與へられ、小坂に金錢十匹羽織を賜りぬ。
一說に、小坂を一番と記せり。秀吉坂を賞して刀を與へられけるに、坂申しけるは、一番の賞にて候へば栗田其一人なり。栗田は黑き吹貫にて候ひき。坂が吹貫白くて目に立ち申したるなるべし、と讓りければ、秀吉愈大に感じ、刀を栗田に與へらるとも言へり。