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○杉原常陸智勇の事

卷之十六 第4話 · 段落 2 · NDL 1078984 260コマ L

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上杉家の士大將杉原常陸は、智勇備りたる人なり。東照宮宇都の小山より引返させ給ふ時、上杉家の軍兵共大に勇み合へりしに、杉原獨眉を顰めて、大敵に恐れて引返したりと思へるは其人を知らざる詞なり。德川殿諸將を率ゐ先づ上方に攻上り、石田を討たれんに、十に八九石田敗北すべし。其時殿一人にて如何で德川殿に打勝ち給ふべき。敵國に攻入らずして引返したるは味方の不幸なり、とぞ云ひける。
杉原白石の城を守りしに、何の時の事にや、伊達政宗不意に押寄する事あり。政宗の物見の士馳歸り、敵は靜り返りて、唯町家に火の用心嚴しく呼はり候。物具したる武者杉原かと覺しくて城門を開かせ、將机に懸りて待居たる、と言ひければ、政宗謀有らんと恐れて引返されけり。