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○東照宮松倉市橋堀桑山別所五人へ御遺言の事

卷之二十三 第5話 · 段落 1 · NDL 1078984 354コマ R

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東照宮御病氣重きに及びて、台德院殿も側に御座します。鈍帳の際に松倉豐後守重正、市橋下總守正總、堀丹後守直倚、桑山左馬助、別所孫三郞を召され、此五人忠ある者なり。且大坂大和口にて武功あり。能く將軍に仕へ奉れ、と仰せられしかば、皆淚を流して只兎角の詞無かりける時、又、別所は祿少けれども、此後も取わけ忠あるべき者なり。大和口にてやさしき言をいひたり、と仰せければ、別所泣沈みてけり。此は大和口にて、城兵引返すを追討たざりし時、別所諸大將の前に馬を乘迴し、先年筑紫にて、島津が退口を尾藤が慕はざりしを太閤怒られき。只今追駈くべき圖を外す事無念なり。斯く申す孫三郞は馬一匹故齒を嚙むばかりなり。如何に人々、斯くは腰の脫けたるや、と大音に呼ばはる。此事を聞召しての事なりけり。